第一話:単身者向けの短編ストーリー


「ミツバチが⼀⽣かけて運ぶハチミツはスプーン⼀杯だけ」


ロクに⾒てもいなかったテレビからそう聞こえてきて、スマホからテレビに⽬をやる。

私はいま、⼀体何匹分のミツバチたちが⽣涯かけて運んだハチミツを⾷べているのだろう。

たっぷりとハチミツのかかったヨーグルトを⼝に運びながら考えてみる。

ミツバチは働きバチと⾔われるぐらい⻑時間働いている。

それなのに、⼈間からしたらスプーン⼀杯という限りなく少ない量しか⽣涯かけても運べない。なんて儚いんだろう。

テレビの情報によると、働きバチと⾔われるのは全てがメスバチで、

オスバチはグータラしているらしかった。

オスバチはただ⼦孫を残すための役割。巣で餌をもらいながら、
ほとんどの時間をじっとして過ごしているそうだ。

「私もオスバチだったら働かなくていいのかな〜」

⾃分でも笑ってしまうほどくだらない妄想が浮かんでくる。

ばかなこと考えてないで、早く寝なければ。

明⽇も仕事だ。テレビを消して、⾵呂に⼊ることにした。

湯船につかりながら、さっき⾒たミツバチたちのことを思い出す。

以前違うテレビ番組で、働くという⾔葉は⼀説によると「傍を楽にする」が本来の意味だと紹介されていた。

誰かを楽にすることが働くこと。まさにメスバチたちのやっていることが働くことであると思った。

私は本当の意味で働くことができているのだろうか。

⾃分の⽣活を維持するため、嫌々ながら働いている。

誰かを楽にするために働くなんて考えたことがなかった。

あんなに⼩さな体で、⽣涯せっせと働くミツバチたちには、頭が下がる。

私の仕事も、もしかして少しは誰かを楽にしてあげられてるのかな?

次の⽇の朝。

ヨーグルトにたっぷりとハチミツをかけて⾷べる。ふわっと広がる花の⾹り。

とろりとした⾷感。

ミツバチたちが⽣涯かけて作ったものと思うと、昨⽇よりも⾼価なものでも
⾷べてるようだ。

いつもより勢いよく家から出た。道に咲く⼀本の花に⽬が⽌まった。ミツバチだ。

気を引き締めて⼼の中でつぶやく。

「よし、働くか」