第三話:プレゼント(ギフト)にまつわる短編ストーリー


プレゼントは何かイベントがあるときに渡すものだと思っていた。


誕⽣⽇やクリスマス、記念⽇などなど。

特別な⽇に、特別に渡すものがプレゼントなのだと思っていた。

だからなんてことのない⽇にもらったプレゼントが、すごく印象に残っている。

それは、付き合って1 年ぐらいになる彼⼥からもらったものだった。

なんてことのない普通の⽇。

彼⼥と家でまったり過ごしていたときにプレゼントをもらった。⼿袋だった。

彼⼥と⼿を繋ぐとき、ぼくがいつも冷たい⼿をしているからと⾔って渡してくれたものだ。

「これで寒くないでしょ?」

そう⾔って、彼⼥は笑っていた。

それから

「でも⼿を繋ぐときは外してね」

と付け⾜した。

何かイベントがあるときよりも、普通の⽇に突然もらったプレゼントの⽅がなんとく嬉しかった。

それはきっと余計な期待がないからだろう。

何かイベントがあるときは、プレゼントをもらうことがわかっていることが多い。

誕⽣⽇もクリスマスも記念⽇も。

たぶんきっと彼⼥はプレゼントをくれるのだろうと期待してしまっている⾃分がいたのだ。

何の前触れもなく、何の期待もない、なんてことのない⽇のプレゼント。

そのプレゼントこそがぼくにとっては特別だった。

だからぼくも彼⼥に突然プレゼントを渡すことにした。

何かイベントがあるわけでもない、なんてことのない⽇に。

「これ、この前のお返し」

ドキドキしていたが、冷静を装って包みを差し出す。

「え?なに?お返しなんていいのに」

悪いねと⾔いながら、彼⼥は嬉しそうにプレゼントを開けた。

ぼくがあげたのは、ハチミツで作られたハンドクリームだった。

彼⼥の⼿は冷たくはなかったけど、いつも乾燥しているようだったから。

「ありがとう」

と彼⼥は⾔ってさっそく⼿にハンドクリームを塗る。

ふわっと華やかなハチミツの⾹りが広がった。

それは彼⼥と⼀緒にいるときに感じていた感情の⾵味にも似ていた。

⽢ったるくて、少しこそばゆい。

だけど、ずっと嗅いでいたくなるような匂い。

ぼくは彼⼥にもらった⼿袋を外して彼⼥の⼿を握った。

「いい匂いだね」

なんてことのないことだけど、幸せって、きっとこういうことなのかもしれないと思った。